旅するラコブログ

バックパック旅行記や、辛いもの、ビールのこと、書き留めておかなきゃ忘れそうな些細な思いを綴ってゆきます。

ラコ論 *(36歳・女性)*

こんにちは。今回は ラコ論 です。日常や非日常でフと抱いたプチ疑問やプチ発見を少しだけ掘り下げて、それ以上掘り下げないシリーズです。

 

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↑高校1年生の私。この頃から中身が変わってない・・・

 

 

 *(36歳・女性)*
 

 (36歳・女性)が一人で旅してるってどんな状況よ?って驚かれて、我に返った話です。

 バックパッカーデビューが20代後半と比較的遅かったこともあり、たまに長く休める時期を狙って一人で海外をウロウロしているうちに、2016カンボジア〜タイ〜ミャンマーの旅の頃には36歳と相成っておりまして。
 36歳、女性。既に家庭を築いていれば、家族を置いて一人で旅に出るというのがメジャーな選択ではなかろうことは、安易に想像がつきます。一方、独身で働く身であれば長期の休みはなかなか取れないだろうし、或いはまとまった休暇に旅行でもとなれば、ある程度のラグジュアリーを確保したバカンスを選択するのではないでしょうか。そんな中、妙齢のオンナがでっかいリュックサック背負って安宿とオンボロバスを渡り歩いて何やってんだ?・・・って、そりゃ謎に思いますよねって事にやっと気づいたのが今回の道中だった、というお話です。
 もう少し話を広げると、世の中に於ける(36歳・女性)の概念と、自意識との距離感を自覚した、ということ。冷たく言えば、「いい歳して何やってんの?」てことですよ。

 旅の途中でいろんな国からの旅人や現地の方々と話をする中で、私の年齢と一人旅である事を明かすと大概、「なぜ一人で!?」と驚かれます。女性、殊アジア人女性の一人旅自体が珍しいので(欧米の女の子バックパッカーは結構いるのになぁ)、20代の頃でもやはり「え〜!女の子一人で、怖くない?寂しくない?」という反応は同じくあったのですが、今回はそれに加えて、「家庭はいいの?子供や旦那さんは家に残してきたの?」というクエスチョンを浴びる事が何度もあったのです。特に現地の人々には、そもそも女性がこの歳で独身であること自体が謎すぎるようで、もう、なぜ一人旅なのかよりも「ナゼ!?ナゼ結婚していないのだ!?」と、人それぞれのアクションで驚きと疑問を表現してくれるのでした。女性の独身を珍しく思わない文化圏の人であっても、やはりバックパッカーで一人旅といえば若者の旅スタイルというイメージが強いようで、何か触れてはいけない理由があるんじゃないかと気を遣われているような気配を感じることもあったものです。

 「ナゼ(36歳・女性)が一人で旅をしているのだ!?」を最初に追求してきたのは、プノンペンで泊まったゲストハウスの男子スタッフ。有難い(?)ことに彼は私のことを20代前半と見積もっていたそうで、実年齢を教えてもなかなか信じてもらえず(自慢してるんじゃないですよ、そんな歳のオンナが一人でこんなトコ旅してるワケないという、彼の先入観なんです)、パスポートを見せて証明すると、かなり衝撃を受けていました。36歳で女性がフラフラと一人で旅をしているなんて!ガーン!・・・というリアクションを突きつけられて、こっちこそガーン!でした。
それ以降、彼ほど執拗に私の現状を解明しようとしてくる人はいなかったけれど、歳を訊かれる度に、自分が世間にどう映っているのかということを意識するようになり、バツが悪いというか、年甲斐のないことをしている自分に後ろめたさを覚えるようになったのです。「いい歳して何やってんの?」と。

 そんな折、カンボジアからタイへ向かう長距離バスの中で、同い年(いや、一個下だったかも)日本人バックパッカーリョータくんと知り合いました。彼は一週間の休暇をとってカンボジア〜タイを旅しているとのことで、私は同年代の日本人を見つけたことが嬉しく、上述の旨を話してみました。彼にも似たような経験があったようで、「自分たちの年齢がどういう社会的イメージを持たれているのかってことにハッとさせられる瞬間ってあるよね」と共感を得られました。
 この感覚を共有できる仲間を見つけたことは、まず私を安心させました。そして、モヤモヤを言葉に表してみたことで、気持ちも脳みそも整頓されました。で、気づいたのが、冒頭の(36歳・女性)に対する社会的概念と自意識との間にの距離、だったのです。
 つまり私は、自分が『36歳たるもの』になっていたことに、自覚がなかったんですね。いつまでも若人の延長線上にあった自意識との現在地との距離に気づいて、「えっ、もうココ?」ってキョロキョロしたんですね。
 そういえば卒業後の進路だって、「私は演劇の道を進むんだ!」といった決意をしたのではなくて、就活時期に手がけていた公演にかまけて面倒なことから目を逸らし続けているうちにまた次の公演が決まって、目の前の好きなこと楽しいことにおびき寄せられながら気づいたらイマココ、というナァナァなものでした。あの頃も、自分がいわゆる『人生の岐路に立つ年齢たるもの』であることに気づいていなかったんじゃないかと思うのです。自分の相変わらずさに、苦笑いです。

 きっと、自分が『何歳たるもの』であることに無自覚であったからこそできたこともあったかと思います。バックパッカー旅もそうだし、今の仕事もそうだし、きっとたくさん。でも、どこかで「いい歳して何やってんの」っていう声も聞こえてくるんですよね、他人からじゃなくて、自分の中から響いてくる声が。
 そんな時、自分と『何歳たるもの』との隔たりをわかっていれば、それに臆せずにいられるんじゃないかと思ったのです、と言うか、開き直ったのかな。「はいそうです、私はちょっと珍しい趣味とライフスタイルでやってます、でもこれ自分で選んでやってるので大丈夫です。」っていうことをわかっていようと。長距離バスという名の精神と時の部屋で、静かに開き直りました。

 「いい歳して」やってることをわかっててやってやろうじゃないかと、少しだけリニューアルした(36歳・女性)のバックパッカーだったのでした。


注:文中の年齢は、2016のものです。